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アルザス地方のブドウ産地は、北はタン村 (オー・ラン県) から、南はマルレンハイム村 (バ・ラン県) まで、100キロメートル以上にわたり、縦長に広がっています。地形的には、ライン河の西側にある平原と、ヴォージュ山脈の東斜面に挟まれた細長い地域 で、東西の幅は最も広い所でも4キロ程しかありません。また、 この地帯からやや北に離れたドイツ国境近くのウィッサンブール周辺にも、小さな生産地区があります。

 

アルザスのAOCワイン(原産地呼称統制ワイン)は、 他の生産地方と同じく階級式で、まず、AOCアルザスが、その上には51の特級畑で造られたAOCアルザス・グラン・クリュがあります。また、AOCアル ザスのカテゴリーの中には、世界的に有名な甘口ワイン『貴腐ワイン(セレクション・ド・グラン・ノーブル Sélection de grains nobles)』や『ヴァンダンジュ・タルディヴ(Vendanges tardives)』も含まれており、これらのワインには、『貴腐ワイン』又は『ヴァンダンジュ・タルディヴ』と、ラベルに記載することが認められていま す。

アルザス地方では、白のスティルワインの生産が中心ですが、ピノ・ノワールをベースにしたライトボディのロゼワインや赤ワインも少量ながら造られており、 これらアルザス産ピノ・ノワールの知名度や評価は年々高まっています。また、この地方では、AOCクレマン・ダルザスという発泡性ワインも生産されていま す。

これまでの生産者の地道な努力が実り、アルザス地方は、今日、フランスの優れたワイン産地の1つとして認められています。

 

近年のヴィンテージ情報

2007年 : 例年以上に9月が快晴続きだったため、傷のない完熟ブドウが収穫できました。全体的に質が良く、豊作だったため、当たり年と言えるでしょう。貴腐ワインやヴァンダンジュ・タルディヴも良い出来でした。

2008年 : 天候不順で、生産区域やブドウ品種によって、収穫されたブドウの成熟度に大きな差が出た年です。また、9月に快晴が続いたため、収穫時期が長引きました。 一般に、このヴィンテージの白ワインは、 好ましい酸味と美しく新鮮なアロマに恵まれています。また、グラン・クリュなど優れたテロワールでは、長期熟成に耐えうるワインが造られました。

2009年 : 病害の発生が少なく、傷のない完熟ブドウが収穫できた年です。一般に、アルコール度が高く、酸味も適度にあるヴィンテージとなりました。香りが際立って豊 かなため、熟成期間の短いワインもお勧めです。10月は天候に恵まれ、貴腐ワインやヴァンダンジュ・タルディヴも秀逸なものが造られました。

2010年 : 前年度より収穫高は20%減少しましたが、爽やかさと果実味の豊かなブドウが収穫できました。チャーミングなヴィンテージです。

2011年 : 温暖な春の後、初夏に雨が降ったため、酸味の少ない、よく熟した、果実味豊かなワインとなりました。長期熟成向きの偉大なテロワールを除けば、飲み頃に達するのが早いヴィンテージです。

2012年:やや混沌としたサイクルにもかかわらず、このミレジムは良いバランスを持つ。クレマンのベースワインは素晴らしく、又ピノ(白、グレー、黒)も優れている。他の品種は普通だが、ある程度は良い品質である。

 食事との相性

シルヴァネール : 爽やかで果実味豊かなワイン。前菜(薄焼きピザやオニオンタルト)やアペリティフとともに供されることが多いです。

ピノ・ブラン : 繊細でしなやかなワイン。具沢山のサラダや焼き魚と一緒にどうぞ。

ミュスカ: ミュスカ種(マスカットブドウ)の特徴がよく表れているワインです。アスパラガスやエスニック料理と相性が良いでしょう。

リースリング : 力強く骨太であると同時に、香り豊かでエレガントな味わいのワインです。白身魚とよく合います。

トケイ・ピノ・グリ : まろやかで仄かにスモーキーな味わいのワインです。主菜なら、リ・ド・ヴォーや鶏料理と、デザートならフルーツ系のケーキとのマリアージュをお試しください。

ゲヴェルツトラミネール : アルコール度が高く、表情豊かなワインなので、スパイシーな料理や癖の強いチーズ(マンステールやブルーチーズ等)とよく合います。

クレマン・ダルザス : アペリティフや立食パーティーの席にぴったりの発泡性ワインです。ロゼはフルーツ系のパティスリーとも相性が良いでしょう。

ヴァンダンジュ・タルディヴや貴腐ワイン : フォアグラ(特にフォアグラのポワレとは絶妙の相性です)や、 杏や洋梨、プラムなどのフルーツタルトと一緒にお召し上がりください。また、ワインだけで賞味し、その魅力をゆっくり堪能しても良いでしょう。

 

アルザス地方の原産地呼称統制(AOC)

 

Alsace A.O.C. - AOCアルザス

紹介: AOCワイン産地としてのアルザス地方は、シャンパーニュ地方と並んで、フランス最北のワイン産地です。地理的には、ライン河の西側、ウィッサンブール市からミュールーズ市まで、 南北に凡そ110キロメートル、細長く広がっています 。

AOCアルザスには、この地方で昔から栽培されていたブドウ品種、すなわちリースリング(AOCアルザス全体の23%に相当)、ゲヴェルツトラミネール (同17,5%)、ミュスカ(同2,5%)、トケイ・ピノ・グリ(同9%)、シルヴァネール(同15%)、ピノ・ブラン又は クレヴナー (同20%)、シャスラ、そして赤やロゼワイン用のピノ・ノワール(同8,5%)を使用することができます。生産されるワインの大部分が単一品種ワイン で、ワインの原料となったブドウ品種名は表ラベルに記載されます。また、2種類以上のブドウを調合した場合には、ラベルにエデルツヴィッカーと記されま す。

AOCアルザスを名乗るためには、オー・ラン県かバ・ラン県で瓶詰めし、ラベルに使用品種を明記することが条件となっています。

Sols et climat 土壌と気候 : アルザス地方のブドウ畑は、ヴォージュ山脈東側斜面の丘陵地帯に広がっています。この地帯はヴォージュ山塊の陥落やライン地溝帯の形成によって、『ピアノ の鍵盤』状に、断層が縦に入っています。地層に亀裂が生じているため、1つの村(コミューン)に複数の土壌があることも決して稀ではありません。

ローファでは粘土石灰質土壌、アメルシュヴィールや エギスハイムでは粘土珪酸質土壌、インゲルスハイムでは石灰質土壌と言った具合に、アルザスのブドウ畑の土壌は、花崗岩質、片麻岩質、石灰質、砂岩質、砂、砂利質など、実に多様な地質構成となっています。

冬は寒さが厳しく、夏は暑くて快晴の続く半大陸性気候です。 西からの湿った空気がヴォージュ山脈で遮られるため雨が少なく、年間降雨量は凡そ450~500ミリです。

Types de vins 味わい :  様々なブドウ品種があるため、一言にアルザスワインといっても、味わいは多彩です。

アルザス リースリング : 通常、アルザスのリースリングは辛口ワインで、力強さと天性の気品を兼ね備えています。繊細でエレガントな、とろみがあって果実味豊かな、柔らかい酸のあ る快活なワインと言えるでしょう。黄緑色の光沢のある淡い黄色で、バラや菩提樹など花の香りやミネラル香があり、熟成を経るにつれスモーキーなニュアンス がでてきます。

アルザス ピノ・グリ : アルコール度が高く、コクがあり、余韻が長く、力強さと凝縮感、そして複雑さを備えたワインです。リースリングのボディと酸を持っていて、色は淡い黄色。香りは、森の下草や杏、桃を彷彿とさせます。スモーキーなニュアンスもあります。

アルザス ゲヴェルツトラミネール : ボディのしっかりした、パワフルでコクのある辛口ワインで、通常、アルコール度は高く、エレガントで柔らかさもあります。酸は低めで、アルコールとグリセ リンがしっかり感じられる味わいです。色は黄金色で、ライチやグレープフルーツ、アイリスやバラ、すみれ、スパイス等、この品種独特の香りがあるため、香 りを嗅いだだけでブドウ品種を言いあてることができます。

アルザス ミュスカ : 果実味豊かで気品に溢れた辛口ワイン。張りがあって、繊細で軽やかなワインで、馥郁として官能的な味わいが楽しめます。酸は低く、アルコールは強め。レモ ン色で、ミュスカ(マスカットブドウ)特有の香りをまとい、まるで生のマスカットを頬張るような味わいが口の中で広がります。

アルザス シルヴァネール: 爽やかで軽やかなワインで、果実と植物を思わせる香りがあります。やや酸があり、アルコール度は中程で、果実味豊かで快活な味わいです。爽やかな果実味とアロマを楽しむために、熟成期間の短い、フレッシュなワインが多く造られています。

アルザス ピノ・ブラン : しなやかでまろやかで滑らかな口当たりの、繊細でバランスのよいワインで、リースリングより造りは軽めです。香りは、花やリンゴや杏、桃などの果実、蜂蜜を連想させます。

アルザス ピノ・ノワール : アルザス唯一の赤ワイン。ラズベリーやサクランボを思わせる香りをまとった、いきいきとして爽やかなライトボディのワインです。樽熟成したものは、よりしっかりした造りとなり、味わいもより複雑になります。

ヴァンダンジュ・タルディヴと貴腐ワイン : アルザス地方では、1984年以来、この2種類の甘口ワインを生産し、この名称をラベルに表記することが、政令で認められています。但し、ヴァンダン ジュ・タルディヴや貴腐ワインの原料となるブドウは、トケイ・ピノ・グリ、リースリング、ゲヴェルツトラミネール、ミュスカの4品種のみに限定されていま す。

ラベルに『ヴァンダンジュ・タルディヴ』或は『貴腐ワイン』と表記するためには、厳しい生産条件を守る必要があり、事前申請の上、分析及び試飲審査した後に、認可が認められます。

ヴァンダンジュ・タルディヴは、収穫開始後数週間経った過熟ブドウから造るワインです。複数のブドウ品種を調合、混醸することはできず、ラベルに使用品種 を記載することが義務づけられています。また、補糖は一切認められておらず、最低アルコール度数も、リースリングとミュスカは12,9度以上、ゲヴェルツ トラミネールとトケイ・ピノ・グリは 14,3度以上と、政令で定められています。

貴腐ワインは、選果に選果を重ねた貴腐ブドウの粒から造られるワインです。生産条件は『ヴァンダンジュ・タルディヴ』と同様ですが、最低アルコール度数 は、リースリングとミュスカが15,1度以上、ゲヴェルツトラミネールとトケイ・ピノ・グリが16,4度以上となっています。

 

Alsace grand cru A.O.C.

AOCアルザス・グラン・クリュ

Présentation 紹介: 第二次世界大戦後に、テロワールの高い品質水準を保持したいという生産者たちの願いが叶い、アルザス地方の最も優れたテロワールは、フランスの国立原産 地・品質研究所によって、『グラン・クリュ(特級畑)』に格付けされました。これらのテロワールは、「秀逸したワインを生み出す土地である」ことを基準に 選ばれており、現在、51箇所の区画がグラン・クリュ(特級畑)に認められています。

『グラン・クリュ』を名乗るためには、生産区域のみならず、原料のブドウ品種も限定されます。これまで、グラン・クリュに使用できるのは、リースリング、 ミュスカ、ゲヴェルツトラミネール、トケイ・ピノ・グリの4品種のみでしたが、最近になって、シルヴァネールも、極一部のテロワールに限って認められてい ます。生産条件はAOCアルザスより厳格で、1ヘクタールあたりの収量制限も低く、アルコール度数もリースリングとミュスカは10度以上、ゲヴェルツトラ ミネールとピノ・グリは11度以上となっています。また、ラベルには、ブドウ品種、収穫年、テロワール名を表記することが義務づけられています。

Sols et types de vins土壌とワインの味わい :  先述した通り、アルザス地方の独特な地質学的背景ゆえに、Steinklotzは花崗岩質、Engelbergは石灰質の泥灰土、Kastelberg は砂岩質、Rangenは火山岩質など、グラン・クリュのテロワールにも様々な土壌が存在します。グラン・クリュの畑は、通常、日当りのよい急勾配の斜面 にあり、独特のミクロクリマの影響下にあるため、AOCアルザスよりも、味わいに複雑みがあり、造りのしっかりした、 成熟に時間を要するワインが多いです。

『グラン・クリュ』と一言に言っても、ブドウ品種によって相性の良い料理は全く異なります。リースリングと鮭のスフレ、ゲヴェルツトラミネールとチキンカ レー、トケイ・ピノ・グリと車エビのグラタン、ミュスカとアスパラガスは、料理とアルザス・グラン・クリュのマリアージュのほんの一例です。

Lieux-dits classés en grand cru グラン・クリュに格付けされたテロワール(リュー・ディ) :

 

Altenberg de Bergbieten、Altenberg de Bergheim、Altenberg de Wolxheim、Brand、Bruderthal、Eichberg、Engelberg、 Florimont、Frankstein、Froehn、Furstentum, Geisberg、Gloeckelberg、Golbert、Hatschbourg、Hengst、Kaefferkopf、 Kanzlerberg、Kastelberg、Kessler、Kirch-berg de Barr、Kirchberg de Ribeauvillé、Kitterlé、Mambourg、Mandelberg、Mar-ckrain、Moenchberg、 Muenchberg、Ollwiller、Osterberg、Pfersigberg、Pfingstberg、Praelatenberg、 Rangen、Rosacker、Saering、Schlossberg、Schoenenbourg、Sommerberg、 Sonnenglanz、Spiegel、Sporen、Steinert、Steingrubler、Steinklotz、Vorbourg、 Wiebelsberg、Wineck-Schlossberg、Winzenberg、Zinnkoepfé、Zotzenberg。

Crémant d’Alsace A.O.C.

AOCクレマン・ダルザス

Présentation 紹介: クレマン・ダルザスの醸造には酸が必要なため、 完熟する前のブドウを手作業で収穫し、醸造します。毎年、クレマン・ダルザス用のブドウからアルザス地方の収穫がスタートするのはそのためです。

クレマン・ダルザスは、シャンパーニュと同じように、蔗糖と酵母を混ぜた液体を添加した後、瓶内二次発酵させるメトード・トラディショネル方式で醸造され る発泡性ワインです。原料となるブドウ品種は、ロゼの場合はピノ・ノワールのみ。白の場合は、ピノ・ブラン、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、リースリング、 シャルドネの5種類ですが、実際にはピノ・ブランが最も多く使われています。

クレマン・ダルザスの生産量は、アルザスワイン全体の凡そ10%です。

Règles de production 生産条件:政令で生産条件が細かく定められています。ブドウ液(マスト)は潜在アルコール度数が8,5 %で、収穫は全て手摘みで、ブドウの運搬には通気性のある容器を使うことが条件です。ブドウ150キロにつき圧搾してもよい果汁の量は100リットルまで で、数回圧搾されますが、最後の圧搾果汁(ルベッシュ)はクレマンとして醸造することができません。また、瓶内二次発酵後、少なくとも9か月間は、澱とと もに成熟させます。特にヴィンテージ入りクレマンなどスペシャルキュベでは、更に熟成することが多いです。

Types de vins 味わい:クレマン・ダルザスの特徴は、きめの細かい気泡、キレの良さ、ライトボディの3点でしょう。爽やかで、筋が一本通った、香り高く、繊細で、エレガ ントなワインです。味わいは、快活で調和がとれていて気品があります。新鮮な果実味を楽しむべく、なるべく早くに飲みたいワインです。